荒井 謙(Ken Arai)インタビュー

THE VINCENTSで活躍したロックンローラーの荒井謙さんが8月1日、永眠した。
ワルダ編集部では、2009年3月20日(第78号)『ワルダ』にて、同氏のインタビューを実施していた。
哀悼の意を表して、再掲させていただきます。


過去、ロカビリーシーンを牽引したバンドの中にTHE VINCENTS(ザ・ヴィンセンツ)がある。
メジャーシーンの一線で活躍し、俳優 永瀬正敏氏の楽曲制作もサポートした人気のバンドであった。
活動期間は短かったが今でも人気があり、ファンが多い。

今回、幻のCDといわれライブ会場で限定1500枚だけ販売された
《COOL AND CRAZY WORLD OF THE VINCENTS》がリマスター版(+未発表曲収録)で発売!
今日は、そのヴィンセンツのボーカリスト《荒井謙氏》にワルダが迫る!
(以下、荒井=荒井謙 ワルダ=ワルダ編集員)


ワルダ
VINCENTSを知った時には既に解散した後で、やっとCDを中古で手に入れて、という感じで伝説でしかなかったんですが活動期間はどの位だったんですか?

荒井
俺も正確なところは覚えてないけど、3年位かな。’88~’91までだったと思う。
多少前後するかもしれないけどそれくらい。

ワルダ
それは結成から解散まででですか?

荒井
そうそう。

ワルダ
VINCENTSって、元ヒルビリーバップスの川上剛さんの呼びかけで結成されたんですよね?最初の’88からメジャーだったんですか?

荒井
そこがちょっと複雑で、キティーレコード内のチューレーベルっていう…
なんでチューかっていうと、チューってネズミじゃない(苦笑)。で、窮鼠猫を噛むっていう、まぁダジャレなんだけど、で、チューレーベルから『All By Myself』『All By Yourself』っていうアルバムを出して。
俺は正直言ってその出来にすごく不満だったの。で、会社のちょっと偉い人に掛け合って「プロデュースからジャケットから一切合切俺にやらせてみろ」って言って、それが今回のリリースの母体になる、ライブ会場限定1,500枚の、『COOL AND CRAZY WORLD OF THE VINCENTS』っていうアルバムなんだけど。

ワルダ
今回リリースされるCDと同じタイトルなんですね。

荒井
今回のアルバムは『KOOL AND KRAZY WORLD OF THE VINCENTS』って、差別化するために敢えて《C》が《K》になってるんだけど。

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ワルダ
3年間でリリースが結構多かったようですが、会社的に出さなきゃみたいな感じだったんですか?

荒井
そうだね、後半は特にそう。コレだけお前らに金かけてるんだから、頑張って《カラオケで歌える歌を書け》って言われて…。

ワルダ
ちょうど90年台初頭っていうとカラオケ全盛期でしたもんね…。

荒井
知ってると思うけど、その頃って「ブランキージェットシティ」がすごい人気が出てきた頃で、多分会社としては第2の「ブランキージェットシティ」って言うか、そういうポジションを狙っていたみたいで。でも俺には、「おばあちゃんが編んでくれたセーターがどうとか」っていう歌は歌えないので。

ワルダ
「おばあちゃんが編んでくれたセーターを着なくっちゃ」ですね?

荒井
そうそう。とにかく、俺は自分で書いて、作詞作曲した歌しか歌えねえから、他に無駄なもん持ってくんの止めてくれ、って言ってて。

ワルダ
今回出るCDはVINCENTS時代の中でも最も思い入れが強いものですよね?

荒井
強いね。既に会場限定でリリースした『COOL AND CRAZY WORLD OF THE VINCENTS』の6曲もそうだし、今回ボーナストラックで7曲目以降に入れた曲も、デモテープで終わってしまった曲で作品として残ってない曲がほとんどなのね。一曲『Time Bomb』っていう曲だけは『PSYCHO DRIVE』に入ってるんだけど、それも演奏がキレイな音になっちゃっていて、俺はガレージっぽい音の方が好きだから、今回敢えてデモ版の方を採用し直したっていう。

ワルダ
VINCENTSはサイコビリーっぽいのかな?って思っていたんですけど。

荒井
それは、剛君が「絵に描いたようなロカビリーバンドを作りたい」っていうことではじまったバンドだったからだと思う。でも、それだけじゃつまらないし、っていうことで、7曲目以降のアプローチを試みた訳だけど。
あと、ここではっきり言っておきたいのが、『COOL AND CRAZY WORLD OF THE VINCENTS』を、ヤフオクで7800円で売ってるバカ野郎がいたんだよね。
で、頭にきちゃって、俺。
それ見た時に、VINCENTSって現存するバンドではないけれど、やっぱり俺が残した音源だから、そういう意味合いではやっぱり色んな人に聴いてほしいんだよ。
だから、2300円っていう安い値段で、ヤフオクでは手が出なかったけど
VINCENTSに興味があるっていう人に2300円、しかもボーナストラック付で
買って聴いてもらうのが、俺の理想。

ワルダ
アルバムの中で1番コレは、っていう思い入れのある曲は?

荒井
それは、10曲目に入れた『I wanteverything』っていう曲が思い入れがすごくある。例えばアルバムの中に10曲入ってるとすれば、自分の子供が10人いるようなもんじゃない?まぁだから10人子供がいてどの子がかわいいかって聞かれるのと同じでちょっと言葉に詰まっちゃうんだけど、俺がVINCENTSの未来形として提示した曲が10曲目で1番思いが込ってるかな。

ワルダ
収録曲の中でいい意味で1番キャッチーで好きです。ガレージっぽくて、メロディアスでメッセージ性も強いですよね。アラケンさんの最近の活動について教えていただけますか?

荒井
今は、バンドのヘルプやゲストに呼ばれて入ったり、ユニット組んでみたり、正直、VINCENTSで活動してた時よりも今の方が幸せなんだよね。あと、今ちょっと開店休業状態になっちゃってるんだけど「Juke Box Junky」ていうバンドを作ったんだ。それはドラムもベースもまだ26~27歳位の若いヤツで、一緒にスタジオ入ると俺の予想外の音を出してくるんだよね、それが面白くて。

ワルダ
スリーピースですか?

荒井
スリーピースです。やっぱりロックの原点はスリーピースとかツーピースでしょ。
それも含めて、むしろこれから先また面白いことをしていきたいな、っていう。
アコギ1本でも、DJとしてでもあなたの街へ行きますよ、どんなに遠い場所でも、俺を呼んでくれるなら喜んでそこに駆けつけたい、っていう気持ち。

ワルダ
なるほど。今度ぜひワルダが協賛している「シンパeナイト」にも出て下さいよ!

荒井
それはもう機会があれば全然。

ワルダ
ありがとうございます!本日はどうもありがとうございました。
今後のご活躍を楽しみにしております。

(2009年3月20日(第78号)『ワルダ』より転載)


 

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